鵺とトラツグミ
こんにちは、森+LABOです。
今回は冬の東山で見られる野鳥「トラツグミ」を紹介します。

トラツグミは体長約30cmくらい。東京の都心でも見られるヒヨドリに似た大きさの鳥です。
トラツグミは山地の森林や雑木林、農耕地、公園などに生息し、茂った林の中を低空飛行しています。
寒いところに生息しているものは、冬の間だけ、より暖かい場所に移動する「渡り鳥」ですが、
東山のまわりで見られるトラツグミは夏に山地で繁殖し,冬季平地で越冬する「漂鳥(ひょうちょう)」です。
昔は里山で普通に繁殖していたので留鳥(一年中同じ場所に留まって生息している鳥のこと)でしたが、
最近は都県境の山地でしか繁殖記録がないので漂鳥になります。
体の地色が黄褐色で、黒い斑点模様があることから、「虎鶫(トラツグミ)」という名前がつけられました。
飛ぶ時には広げた羽の裏側に黒と白の帯が見えます。
地味なような、派手なような模様ですが、落葉の上を歩いていると背景に同化して見えずらくなります。
基本的には雑食で、地上を歩いては落葉の下にいるミミズや虫などを捕まえて食べたり、
冬の間は木の実を食べたりしています。
でも一番特徴的なのは、トラツグミの「さえずり」です。
それは一体どんなものなのでしょうか?
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鳥には「さえずり」と「地鳴き」という二つの鳴き方があります。
日本野鳥の会のHPにある解説を引用すると...、
さえずり
主にオスが繁殖期に出す美しい声のことで、種によって大きく異なる。さえずりの意味として、ひとつにはメスへの求愛、また、自分の存在を他のオスに知らせる「なわばり宣言」が挙げられる。
さえずりによっては、「聞きなし」といって人間の言葉に置き換えられるものもある。
地鳴き(じなき)
さえずり以外の声のこと。雌雄、成鳥幼鳥、季節にかかわらず聞かれる。
例えばウグイスの地鳴きは「チャッチャッ」という声、さえずりはご存知「ホー、ホケキョ」。
個体どうしの情報交換の意味がある(らしい)。
トラツグミの地鳴きは「グワッ」とか「シーッ」ですが、
さえずりは「ヒューッ」とか「ヒー」と口笛を吹いたような、金属音に近いを出します。
トラツグミの繁殖期である5月~6月頃になると、暗い森にこの不気味な音が響くわけです。
トラツグミはフクロウなどと同じ夜間にさえずる種類の鳥なので、
夜の森にこの寂しげな鳴き声が響くことから、地域によっては「幽霊鳥」や「地獄鳥」と呼ばれています。
さらにもっと昔、古事記や万葉集の中にもトラツグミは登場します。
伝説の生き物「鵺」の声が、このトラツグミのさえずりだとされていたのです。
鵺は頭がサル、胴体はタヌキ、手足はトラ、尻尾はヘビという空想上の生き物。
そんな生き物の声でさえずる鳥が東山の里山の中にいると思うと、ちょっとどきどきしますよね。
もし夜の森の中から笛を吹くような鳥のさえずりが聞こえてきたら、
繁殖期を迎えたトラツグミが鳴いている証。
もし、深い森の中でそんなような声を聞いたら、トラツグミの姿を思い浮かべてみてくださいね。
月夜の森に
夜の森では、日中には出会うことのない生きものたちが活動しています。
今回は、夜行性の生きものたちについてLABOします。

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家路を急ぐ夜更けすぎ、月夜の中、道路を渡っていく生きものを目撃した!なんて経験をされた方はけっこういるのではないでしょうか。
「猫にしては大きいし、もしかしてタヌキ?」といぶかしく思ったあなた。
しかし今時の東京には、夜行性の生き物がもっといます。それはハクビシンです。

ハクビシンはタヌキに似ていますが、白い鼻筋を持ち、電柱や塀など高いところを好んで歩きます。
なので高い場所を歩いていたら、それはハクビシンの可能性が高いのです。
ちなみにタヌキの正式名称は「ホンドタヌキ」といって、外見はこんな感じです。
「東京にタヌキなんているの?」と思うかもしれませんが、東京23区だけでも千頭近くが生息していると言われています。
皇居の森にもいるんですよ!

タヌキもハクビシンも基本的には人目を避け、夜間に行動する「夜行性」の生きものです。
夜道でけものに出会ったら、不用意に近づかないようにしましょう。
さらに、餌をやらない、捕獲しようとしない、ということも守りましょう。
(彼らは野生の生きもので、人間から餌をもらわないでも生きていけます。)
巣、いろいろ

森の中をふと見上げてみると、何やらもじゃもじゃしたものが見えます。
鳥の巣です。
今回は森の中で見かける「鳥の巣」について、LABOします。
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ひとくちに「鳥の巣」と言っても、その形はざまざま。
人の数だけ家の形があるように、鳥の巣もそれぞれです。
でも鳥にとっての巣は、人にとっての家と異なり、子育て期間限定で使われるものです。
つまり繁殖期を経て卵が無事に孵り、ヒナが無事に巣立っていくまで、その命を守るシェルターのような役割を持っているのです。
この期間だけは親鳥も巣の中で寝起きします。
それ以外の期間では、鳥は「ねぐら」という特定の場所で眠ります。
(都市化が進んだ都会では、駅前の大木をハクセキレイのねぐらにされて、大量の糞に悩まされていたりしますよね。)
では森の中で見られる鳥の巣を、いくつかご紹介しましょう。
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最初に紹介するのはエナガの巣です。
エナガはスズメの仲間で、日本でも2番目に小さい鳥です。
スズメよりも小さく、体重は8グラムほど、体長は14cmしかありません。
小さくモフモフとした体に対し、長い尾を持っており、その長い尾が「柄杓の柄」に似ていることから「エナガ(柄長)」という名前が付けられました。

エナガは木の幹や枝の根本に小さな袋状の巣を作ります。
材料は苔、クモの巣、鳥の羽や動物の毛。
エナガの繁殖期である3月頃になると、苔を集めて球形にし、外側には蜘蛛の糸で別の苔を貼り付け、
内側には羽毛やウサギの毛などを敷くという凝った巣を作ります。
凝った巣を作るエナガは、「匠鳥(たくみどり)」と呼ばれることもあったようです。

また、エナガは繁殖期でも群れのまま行動することでも知られており、ヒナの親以外の群れの鳥がヒナに餌を与える場面も目撃されています。
群れで子育てをする鳥なんですね。
さて、次はキジバト。
(鳩というと、よく公園やお寺に群れている鳩を連想しがちですが、あれはドバト。キジバトとはまた違った種類の鳩です。)
茂った木の中から「デデッポポー」「デデッポポー」という鳴き声が聞こえたら、キジバトのいる証拠です。

キジバトは木の上にまばらに木の枝を組み、皿形の巣を作ります。
あまりにも粗に組むので、下から見ると透けて見えるほどです。

しかし卵は親鳥の体に比べ小さいためか、おおざっぱに作ったような巣でも十分に温められるようです。
1度に産む卵は2つだけ。昼は雌が、夜は雄が、交代で卵を温めます。
ハトの仲間は「ピジョンミルク」という子育てのために作られる特別な液体をヒナに与えて育てます。
このピジョンミルク、雄も出すことができるので、キジバトは雄雌が交代で子育てをするのです。
人間に置き換えて考えると、夫婦ともに母乳が出るようなものですから、すごい機能ですよね。
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一口の鳥の巣といっても、機能も形も様々。
基本的には小鳥が巣立ったあとの巣は捨てられて、次の繁殖期には新しい巣が作られるといいますが、
都市化が進んだ場所にかけた巣箱の巣は、同じもしくは異なるつがいが繰り返し使うこともよく見られます。
巣は子育てになくてはならないもの。
もし見つけても壊さずにそっとしておいてあげましょうね。