涼しい風の吹くまち~森が涼を生む~

森のある暮らしのすすめ 2013.04. 8

涼しさを求めて

今日から8月。梅雨が明けるまでは涼やかだった日々はいずこへ?

一転して、うだるような酷暑が続いています。

こんな時には涼しさを求めて、都会を離れ、夏でも涼しい土地へ出かけたくなります。

 

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しかし東京であっても、緑の固まり、つまり森があれば、そこが冷熱源となって周囲の暑さを和らげてくれます。

今回は、森が涼を生む、その冷却効果についてお話ししましょう。

 

植物の蒸散効果

森が涼を生むメカニズムの一番の主役は、植物です。

植物は、夏の厳しい日ざしを受けても、建築物(コンクリートやアスファルト、タイルや鉄など)のように熱くなりません。

例えば太陽熱を受けて熱くなったアスファルトが70度近くあっても、葉の表面は34度程度。葉の裏側に至っては、さらに2~3度低い温度に保たれています。

植物は自身が生きて行くために必要な栄養素を光合成によって作り出します。その際には、根から吸った水分と受けた太陽エネルギーを利用しているのですが、余分な水分を葉から放出します。この水分が蒸発する際に葉のまわりの熱を奪うので、その周囲の温度が下がり、葉の表面温度も構造体のように熱くなりすぎることなく、気温よりも低い温度で保たれていきます。

これを「蒸散(または蒸発散)」と言い、一般的な植物では、太陽から入射する熱のほぼ半分は蒸散に伴って失われています。
蒸散によって冷やされた空気は樹木の下へと下がり、その熱の移動が、木陰へ微かな風を起こします。

夏の暑い日に樹木の下へ行くと、なんとなく涼しく感じるのは、気のせいではなく、植物による確かな熱の移動(やりとり)が起こっているからなのです。

さらにこの効果は、森のように植物がまとまって存在することで、より大きなものとなっていきます。

 

 

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緑のエアコン効果

都市において、森のような存在が、夏場にどれだけの冷却効果をもたらすのか。
防衛大学校などの研究チームがその効果を調べた結果があります。(日本経済新聞の2011年8月29日朝刊)

2009年9月10日~11日に、国立科学博物館附属自然教育園(東京・港区)と周囲の市街地で気温と風速を測ったところ、園内の気温は午前0時時点で18度と、周辺よりも5度低い結果となりました。

公園を覆う涼しい空気の厚みを樹木の高さと同じ約15メートルと想定し、市街地との気温差と風速から計算したところ、園内と周辺の市街地を冷やす効果は大きめの家庭用エアコン4000台分に相当するという結果に。

この自然教育園は約20ヘクタール。緑地の冷却効果は面積に比例するそうですが、「広過ぎると、市街地の熱い空気が中心部まで入り込まず、冷却効果は頭打ちになる可能性がある」(防衛大の菅原広史准教授)というコメントもあります。

森の気温低減効果が周囲にも広がっていくことは、他の研究でも証明されています。

新宿御苑の調査例では、正午すぎの気温の低減効果は2℃、朝夕で約1℃、周辺市街地と比べて気温が低いことが観測されており(2000年夏)、その気温低減効果は200~250m程度の範囲に及びます。

また、風のない夜間でも御苑内からの冷気のにじみ出しにより、周辺80~90mの範囲において、市街地より2~3℃涼しい環境が形成されると調査結果で示されました。

森と家との近さも、夜間の涼しさに大きく関係していると言えます。

 

森に囲まれたまち

このように涼しさを生む森や緑地が住宅地を取り巻いていたら、、、。

どこか遠くの避暑地に足を運ばなくても、自分の家でも十分に、夏を快適にすごすことができそうです。

しかしまとまった緑地というのは、住宅地が形成される時に失われている事が多く、新しく植えられた緑だけでは、涼しさの滲み出し効果を期待できません。

 

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夏の風が南向きの斜面を吹きぬけていきます。(愛宕神社からの眺め)

 

多摩ニュータウン東山の住宅地は、中央の沢沿いに愛宕神社の鎮守の森を抱える地区公園がある他、東から北、西と里山公園や緑豊かな森が住宅地全体をとりまいています。
まちの周りを取り囲むたくさんの植物が、庭や街路樹、緑道、公園の緑とともに、夏に涼しいそよ風を作り出し、暮らしやすい環境形成に役立っています。

暑い夏だからこそ、このまちに吹く涼風を体感し、森のある暮らしの素晴らしさを味わってみてはいかがでしょうか。

 

参考文献
成田健一ほか:新宿御苑におけるクールアイランドと冷気のにじみ出し現象 地理学評論 第77巻 第6号p403-440,2004
外崎公知ほか:都心の緑地が有する夏季における夜間の冷却能力に関する研究 ランドスケープ研究(オンライン論文集)Vol.5(2012)





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