冬の準備~色づく葉っぱのヒミツ~

森+LABO森のある暮らしのすすめ 2013.04. 8

11月に入り、寒さも日に日に増して、紅葉の季節が東京でも始まりつつあります。
今回はこの「植物の葉が色づく仕組み」についてLABOしてみましょう。

 

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落葉と紅葉の関係

冬に近づき、ぐんと気温が下がってくると、葉っぱが色づく木々があります。
一般的に「落葉樹(あるいは落葉)」と呼ばれる種類で、その名のとおり、冬になると葉を落とすものです。
東京の街路樹として馴染み深い「イチョウ」や「プラタナス」、「サクラ」などもこれにあたります。
前回の「どんぐりコーヒー」で紹介したコナラも落葉樹です。

さてこの落葉する木々の葉は、秋になると赤くなったり、黄色になったり、茶色やオレンジ色になったりします。
実はこの葉が色づく現象と葉が落ちる現象は、植物が冬の準備をする一連の流れの中で起こるものなのです。

 

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葉は植物が生きて行くために必要なブドウ糖を作る役割を担っています。
ブドウ糖の生成には、根から吸い上げた水と、空気中の二酸化炭素を使って、太陽の光を受けて光合成を行う必要があります。

 

121105_007.jpgところが冬になると、この光合成に必要な水分を根から吸い上げるのが難しくなります。
気温が下がって土が冷たくなり、乾燥してくるためです。
また光合成に欠かせない日光を受ける時間も短くなるため、葉が行っている光合成の働きも鈍ってきます。
このような状態で葉から蒸発によって水分が抜けていってしまうと、木全体から冬を越す力が失われてしまいます。
そのため落葉樹たちは、葉と枝の間に「離層」と呼ばれる分離帯を作り、冬になる前に葉を落とし、休眠状態に入ります。

 

色づく葉の色々

さて冬の準備として、落葉樹が秋の終わりに葉っぱを落とす仕組みについてはわかりました。
でもなぜ、葉は落ちる前に色づくのでしょうか?
その素朴な疑問についての答えは、色によって異なります。

紅い葉の場合

紅葉は、光合成で作られた糖分が、枝と葉の間にできた「離層」に阻まれて葉にとどまり、その糖から『アントシアニン(anthocyanin)』という赤い色素※1を持つ成分が作られて起こる現象です。

121105_001.jpgサクラの葉っぱ。赤や黄色、まだらに色づく。
※1:『アントシアニン』とは、正しくは赤、青、紫の水溶性色素の総称。酸性が強い場合には赤系、アルカリ性が強ければ青系に発色する。


黄色い葉の場合

葉が黄色くなる(『黄葉/おうよう』と言います)のは、気温が下がって葉の働きが鈍り、葉に含まれる緑色の色素『クロロフィル(葉緑素)』が分解されたため、元からあった黄色の色素『カロチノイド(カロチン類とキサントフィル類)』が目立って起こる現象です。
葉に含まれている色素の割合では、緑色の『クロロフィル』のほうがずっと多いので、黄葉するまでは緑色に見えています。

121105_010.jpg街路樹として多く植えられているイチョウ。
黄色く色づく葉には、赤く色づくための色素『アントシアニン』を作るための遺伝子がないのではないか、と言われています。

 

茶色い葉の場合

さて葉が色づくといっても、赤でも黄色でもなく、地味に茶色くなっていく種類もあります。
クヌギやコナラです。
コナラは葉の周辺から中央に向かって色が変わっていきます。通常は茶色く変わりますが、夏おそく伸びた葉は、赤や黄色に色づきます。

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コナラの葉っぱ。外側からきれいに茶色く変わっていきます。


きれいに紅葉するための必須条件

葉を赤くする『アントシアニン』の合成は、温度と光の条件が満たされて起こります。
さらに鮮やかに紅葉するためには、下記の3つの条件が満たされる必要があります。

条件1.昼夜の温度差が大きいこと(日中の気温が20~25度、夜間の気温は5~10度)

条件2.空気が澄んでいて、葉が充分な日光を受けられること

条件3.大気中に適度に湿度があって葉が乾燥しないこと

こういう条件を満たした年が「アタリ年」と呼ばれる年なんでしょうね。

 

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1日の最低気温が8度以下になると紅葉が始まり、5~6度になると本格的になると言われています。

11月第2週目の東京の週末の気温は、10度を下回るという予報が出ています。

さて今年は、どんな紅葉が見れられるでしょうか。

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