森の目覚め

森+LABO 2013.04. 8

■目覚める木々たち

 

立春を過ぎると、雨の降る日や暖かい日が増え、

眠っていた植物や生き物たちも徐々に目を覚ましてきます。

特に冬の間に葉を落として休眠に入っていた落葉樹たちは、

芽吹きの季節に向けて、静かに活動を始めています。

 

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■目覚めの条件

 

森の中の植物の多くは、厳しい冬を乗り切るために、葉を落とし、冬芽を付けた状態で休眠に入っていました。

その眠りを解くには、いくつかの環境要素が満たされていなければなりません。

それが「寒さ」と「時間」です。

ソメイヨシノの開花で有名な「休眠打破(休眠からの目覚め)」は、

冬芽が、ある一定期間低い温度に晒された後に起こります。

ソメイヨシノの場合は、最低気温が5度以下の状態が、

一般的な落葉樹の場合だと、最低気温が7度以下の状態が、800~1、000時間は必要とされています。

(日数にすれば約33日~42日間)

 

冬が暖かければ、その分桜の開花も早まりそうですが、この「休眠打破」の条件が満たされていなければ

冬芽の目覚めは来ないので、暖冬=開花が早い、ということにはなりません。

 

 

■春の暖かさで一気に成長

 

休眠が終わった後の冬芽の成長もまた、その後の2~3月の平均気温に大きく関係してきます。

例えば3月の平均気温(10度位)を標準的な1日分の成長速度とすると、

それよりも気温が低ければ遅くなり、反対に高ければ倍の速度で成長は進んで行きます。

15度くらいの平均気温が続けば、1日で3日分成長速度が早まるとまで言われるほどです。

 

ソメイヨシノの開花から散るまでは1週間から10日位ですので、

暖かい日が続くと、その分お花見をする期間も短くなってしまいます。

ちなみにこのソメイヨシノは、葉よりも花が先に咲く植物です。

梅や桃、ヤブツバキやこぶし、コバノミツバツツジ等も同じで、冬芽が花芽と葉芽に分かれています。

 

130306_001.jpgすっかり膨らんだコブシの新芽 

 

同じ桜でも、ヤマザクラは花と葉がほぼ同時に開花するので、ソメイヨシノとの区別がつきやすいのです。

 

 

春先の樹木に耳をあてると、樹木が水を吸い上げる音がする、と言いますが、

残念ながら私たちの耳に聞こえているのは、木々が水を吸い上げる音ではないようです。

でも眠りから覚めた樹木の鼓動を感じることは、直に触れないとかないません。

 

芽吹きの季節の植物が持つ、爆発的な生命力。

眠りから覚めた森の中には、目には見えない大きなエネルギーが満ちています。 

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