新緑の森へ
5月初旬は、特に新緑の美しい季節。
多くの人が、美しい新緑を求めて、森へ、山へと足を伸ばすことでしょう。
辞書によれば、「新緑(しんりょく)」とは、
春から初夏にかけて、冬枯れの木々が芽吹き鮮やかな緑色になる現象。」のこと。
今回はこの美しい「新緑」について、LABOします。
■様々な若葉
冬を超える前に葉を落とした落葉樹は、気温が上昇するにつれ、新しい葉を出します。
また落葉樹よりも時期は遅くなりますが、常緑樹も新しい芽を出します。
落葉樹も広葉樹も針葉樹も、新しく出た若葉は、すでに出ている葉と違った色をしています。
しかし成長するにつれ、色がより濃くなって、他の葉と同じ色や形へ変化していきます。
若葉の中で何が起きているのでしょうか?

ツバキ(常緑樹)の葉芽。常緑樹の芽吹きは落葉樹に比べて遅い。

シロダモ(常緑樹)の若葉。柔らかく、毛並みの良いうさぎをなでているような感触。

イロハモミジ(落葉樹)の若葉。縁が少し赤みを帯びている。

キャッラボク(針葉樹)の若葉。深緑の葉に比べ、若葉は明るい黄緑色をしている。
若葉の色は、木の種類によって様々。
薄い緑色だけでなく、白っぽい緑や紫、種類によっては赤い葉を出すものもあります。
「春先に紅葉?」とビックリしますが、その正体は赤い若葉です。
生まれたばかりの若葉には光合成にかかせない「葉緑素(クロロフィル)」が少なく、まだ十分な光合成ができません。
なので、その間「赤い色素(アントシアニン)」を含む成分で、葉を紫外線から守っているのです。
やがて葉緑素が増え、光合成が十分にできるように葉が成長すると、若葉から赤色が抜けて緑色に変わっていきます。

クスノキ(常緑樹)の若葉。赤っぽい葉はやがて緑色に変わっていく。

ヤブニッケイ(常緑樹)の若葉。こちらも赤から緑へ変わっていきます。
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新緑の森の美しさは、新しく生まれた葉が一時だけ見せる変化の妙が生むものです。
夏に近づけば、もっと濃い緑へと変わっていきます。
だからなのか、日本の伝統色の中には、春から夏にかけての葉の変化を表すような色がたくさんあります。
春になって、木々の芽が萌え出る時の色を「萌黄(もえぎ)」
春の野山の若葉の色を「若草色(わかくさいろ)」
黄色の強い「萌黄」に対して、緑色の強い「萌葱(もえぎ)」
他にも、緑、百緑、錆青磁、緑青、木賊色、若竹色、、、。
さまざまな緑色が重なりあって、そこでしか、その時にしか見れない景色を作り出します。
新緑の森の中へ。
この時期でしか味わえない澄んだ森の空気を、たくさん味わってみてください。