雨と森

森+LABO 2013.07.10

空梅雨と言われている今年ですが、段々と雨が降る日も増えてきました。

雨が多くなるこの季節、森の中ではどんなことが起こっているのか、今回は雨と森の関係をLABOします。

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アジサイとアマガエル。
湿度が高い季節はさまざまな生き物にとって過ごしやすい季節でもあります。



梅雨時期の森の中は、春先から伸び始めた落葉樹の若葉が成長し、林床(森の地表面)に影を落としています。

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春先の発芽は、秋から初冬にかけて木が体内に溜め込んだ糖を使って行われます。
春から新たに伸びた葉からも糖は作られているのですが、作る端から木の成長に使われていくため、
木が溜め込んでいた糖の貯金は6月頃には尽きかけてしまいます。

初夏の青々とした森は、一見すると生命力にあふれているように見えますが、
木の根や幹の栄養が不足しているなんて、なかなか想像しずらいものです。
(木の枝や葉をこの時期にたくさん切ってしまうと、木はとても傷んでしまうのです。)

さて、森に降った雨は、まちに降る雨とまた違った流れ方をしていきます。
実はこの森と雨の関係が、私たちの生活を大きく支えているのです。



森と水の関係

森に降った雨は、葉を伝い、土に染み込み、いくつかの地層を経て、地下水が涵養されます。



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土は乾燥すると固くなって、水の浸透力が弱まります。
地下水を蓄えるためにも、地面が適度な湿り気を保っている必要があるのです。

植物に吸い取られた雨は葉から蒸発し、その水蒸気が森の中を潤す霧へと姿を変えます。
樹木があれば、葉が茂って地面に直射日光があたるのを防ぐことで、地表面の乾燥を抑えられます。
また雨が直接地面に当たることがなくることで、土壌の侵食も防いでくれます。

ゆっくり地面に浸透した雨は、やがてローム層等の地層を通って、浅い帯水層に地下水として溜まっていきます。
この層は土壌から浸透してきた水分を地下水として貯める一方で、
土壌層が乾いている時には水分を補給するための水源となっています。

樹木の根は、地表と浅い層の帯水層にある水の移動を調整するという役割も担っています。


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このようにして地下に貯められた地下水は、地表面を流れる河川や、
地表面に蓄えられた湖沼の約5倍存在していると言われています。

高い山が多く、海までの距離が短い河川を多く持つ日本において、
この森が持つ涵養の仕組みは、古くから人々の生活を支えてきました。

森は、ゆっくりを雨を受け止め、地下へ、空へ、形を変えて、水を循環させていきます。

葉から落ちるひとしずくの雨も、ゆっくりを雨を地面に落とす重要な役割を担っていると考えると、

人が森や自然から学ぶべき大切なことは、まだまだたくさん隠されているように感じるのです。

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