夏を彩る花たち
関東地方では梅雨も明け、暑さが本格化してきました。
今回は暑い夏を彩る花たちをご紹介していきます。
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まずは京王堀之内駅から続く街路樹でお馴染みの「サルスベリ(百日紅)」。
夏を代表する「木に咲く花」です。
「サルスベリ」という名前の由来になっている、猿も滑り落ちそうなツルっとした幹。
さわってみるとヒンヤリします。
すべての樹木がさわってヒンヤリするわけではありません。
そうなると、ひんやりする木とそうでない幹の違いはどこにあるのでしょうか?
「樹木ハカセになろう/石井誠治著(岩波ジュニア新書)」の中に、その答えが書いてありました。
人が冷たさや温かさを感じる主な要因として、熱の移動があげられます。
さわってひんやりするものは、さわった手のひらから触った物体に熱が移動する速度が早く、
さわって温かみを感じるものは、さわった手のひらから熱が移動する速度が遅いのです。
コナラやクヌギのように、さわって温かさを感じる木の幹は樹皮が厚く、コルク層を多く含みます。
コルクは空気をたくさん含む発泡スチロールに似た構造をしています。
動かない空気は熱を伝えづらいので、手のひらの熱が移動する速度が遅く、温かく感じます。
反対にサルスベリのようにさわってヒンヤリする樹種は樹皮が薄く、
皮のすぐ内側にある葉緑素はコルク層と違って生きている細胞です。
その生きている細胞は、水分に満ちています。水は空気とは真逆で、熱を伝える力が大きいので、
薄い樹皮を通して、私たちが触った手のひらから体温がすばやく移動し、「ヒンヤリ」と感じるのですね。
街の中で、街路樹として、また庭木としてよく見かけるサルスベリ。
暑くて倒れそうになった時には、ひんやりした幹を触ってみるといいかもしれません。
さてお次は、多摩ニュータウン東山住宅地の街路樹にもなっている「ヤマボウシ」。
アメリカハナミズキの方が街路樹として数多く出回っていますが、二つとも同じミズキ科の植物です。
「ヤマボウシ」は日本の在来種で、「アメリカハナミズキ」は名前の通りアメリカ原産の樹木です。
「白い花が美しい、、、。」と言いたいところですが、白い部分は花ではなく「総苞片」と呼ばれるもので、
真ん中にある突起状の部分が花です。小さな花が20~30個集まって咲いています。
ヤマボウシは本州、四国、九州の山地の林内や草原などに自生している木です。
街路樹として用いられるだけでなく、器具や下駄用の材としても用いられることがあります。
実も甘く、食用にもなるので「ヤマグワ」とも呼ばれます。
9月から10月には赤く熟すので、運良く見かけたら味見してみてください。
森の中にも、夏の花が咲いています。
まず代表的なのがこの花。キツネノカミソリです。
一見すると百合(ユリ)の花に似ていますが、「ヒガンバナ(彼岸花)」と同じヒガンバナ科の植物です。
茎、根の部分にアルカロイド性の毒を持っているため、誤って(?)食べたりすると吐き気、腹痛、下痢などを引き起こします。
気をつけてくださいね。
花が咲くのは8~9月頃ですが、その頃になると名前の由来でもある「カミソリ」のような形をした葉は全て落ちてしまいます。
暗めの林床に、オレンジ色の花が映えるので、夏の森の彩りには欠かせません。
森の中に咲く花は、園芸店の店先に並ぶ外国生まれの花や品種改良された園芸種に比べ、
色味こそ派手ではありませんが楚々とした魅力を持っています。
例えば、「オカトラノオ」という穂状に小さい白い花をつけるものや、
ホタルブクロという鐘状の花をつけるものなどがあります。
(この花の中に蛍を入れて持って帰ったことから「蛍袋(ホタルブクロ)」という名前がついた、という説もあります。)
ちなみにホタルブクロの学名は「Campanula punctata」。
campanella(カンパネラ)とは、教会のそばに立つか鐘塔、または鐘のことを指します。
転じて、風鈴草や釣鐘草等のキキョウ科の科名を「またcamanula(カンパニュラ)」と言うそうです。
園芸種として流通している「カンパニュラ(ツリガネソウ)」は、
ホタルブクロと同じ同じキキョウ科ホタルブクロ属の植物ではありますが、
地中海沿岸地方原産の種を改良したものです。
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暑さを避けて森へ行ったら、夏を彩る小さな花たちを探してみてください。
※夏の森を歩く際の「ちょこっと」アドバイス※
・暑い時期の藪には蛇がいるかもしれないので、不用意に藪に入らないようにしましょう。
・そして夏の森歩きにも、サンダルじゃなく、足首まである靴を履いておきましょう。