夏の終わり、きのこの森

森+LABO森のある暮らしのすすめ 2013.09.11

まだまだ暑い日が続いていますが、時折吹く涼しい風に秋の気配を感じる今日この頃。

そろそろ夏も終わろうとしています。


早いもので、少し標高の高い森では、きのこ狩りが始まっています。


今回は「きのこ」についてLABOします。

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色鮮やかなタマゴダケ。
夏から秋にかけて、日本のほぼ全土の広葉樹林や針葉樹林に点在します。
真っ白な外皮膜に包まれて、まさに「卵」のような様相で表れますが、成長するにしたがって「かさ」や「柄」が伸びていき、
この膜はコップ状のつぼのように柄の足元に落ちていきます。(写真にも写っていますね。)
成長するほどかさが広がり、ほとんど垂直まで広がっていきます。
「タマゴダケ」は食べられますが、「ベニテングダケ」という有毒きのこと似ているので、自信のない人は取って食べたりしないように。



きのこは「木野子」とも書くように、木やその集合体である林や森の環境と密に結びついている菌類です。
きのこを出す菌類にはさまざまな種類があり、木の幹や大枝の中に菌が入ってしまうと、木の中が腐り、やがて枝や幹が折れてしまうものもあります。

よくみかけるのが「サルノコシカケ」と呼ばれるきのこです。

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「サルノコシカケ」という名の通り、猿が腰掛けるのにちょうどよい半円型の子実体(しじつたい、いわゆる「きのこ」と呼ばれる部分)が、木の幹に生えてきます。

サルノコシカケ科に属するきのこの多くは木材を分解して栄養とするので、樹齢が大きく弱った木に入りこみ、倒木の原因になったりします。
スーパーで見かける「マイタケ」も、実はこのサルノコシカケ科に分類されるきのこです。
味が良いので、これを見つけた人は喜んで踊り出すことから「舞う(い)茸」という名前がついたと言われるほど。
クリ、ミズナラ、シイ等の高齢で大きな木の根際に生えるといった特性があり、毎年同じ場所に発生します。


次に雑木林でみかけるのが、これ!
もうわかりますよね?

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そう、「シイタケ」です。旬は春(3~5月)と秋(9~11月)。
本格的に食用にされたのは室町時代で、栽培が始まったのは江戸時代頃から。
自然の環境では、クヌギやシイ類、子なら、ミズナラ、クリといった広葉樹の枯れ木に発生します。

このシイタケやナメコ、ナラタケのように、枯れ木に生えるきのこは森の中の倒木や枯れ木を分解し、土に変えるといった重要な役割を担っています。

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有機物を分解する役割を担った生きものを「分解者」と呼びます。
この分解が起こることで、森の地表面には「表土」と呼ばれる層が堆積していきます。
表土は植物だけでなく、多くの土壌生物の棲みかにもなり、森の基盤を作っていきます。
この表土が自然に堆積していくには、厚さ1cmで100~数百年かかると言われています。
そのことからだけでも、どれだけ重要で、かけがえのないものが森の中にあるのかが伺えますよね。



きのこは生えてくる条件、つまり必要な環境が整わないと発生することのできない非常にデリケートな生きものです。

毎年同じ場所に生えてきていたとしても、例えば夏が暑すぎたり、寒すぎたり、雨が多かったり、少なかったり、
気象条件によって生えてこないことがあります。
もちろん森の中に生えている木の種類によって、発生するきのこも変わってきます。

しろうとが毒キノコを見分ける方法は、ないと言っていいので、食べるためのキノコ狩りは安易にオススメしませんが、
その森がどんな森なのかを想像しながら、涼しくなった森の中を歩くのも、夏の終わりの楽しみと言えるのではないでしょうか。

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