旅立ちの季節

森+LABO 2013.12.11

寒さも深まり、一足ずつ冬に近づいています。

昼間は暖かくても、朝晩がずいぶん冷え込むようになってきました。

そんな朝晩の寒暖差が始まる森の中には色んな木の種が落ちています。
今回はふだん何気なく見ている植物たちの種についてLABOします。

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森でよく見かける種の代表といえば「どんぐり」。
去年はどんぐりでコーヒーを淹れましたね。
>どんぐりコーヒーの記事はこちら「どんぐりコーヒーを淹れてみよう」


どんぐりに代表される植物の種は、様々な方法で種の保存のための進化を遂げてきました。
たとえば地面に落ちている松ぼっくりは、種が抜けたあとの抜けがらです。
傘と傘の間に、小さなプロペラの片側のような形の種が入っていて、これを取り出して植えると発芽します。

木についている状態の松ぼっくりの傘が閉じているのは、まだ種が飛散していない証拠です。

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ちなみに松ぼっくりの種が、おつまみで見かける「松の実」です。
チョウセンゴヨウ(チョウセンマツ)という種類の木の実で、傘から種殻を取り出し、さらにその殻を割って出したもの。
日本でおつまみとして見かけるものはほとんど中国からの輸入品だそう。


それから冬になると目につく赤い実も、種の保存のために植物が遂げた別の進化の形です。


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冬になると真っ赤な実をつけるナンテン。
この赤さが鳥を呼び寄せるためのポイントになっています。
野鳥にとっては、虫などの餌が少なくなるため、こういった果実が魅力的です。
植物は鳥にとっても認識しやすい「赤」を実の色とすることで、より多くの飛散をもくろんでいるのです。
センリョウ、マンリョウ、アオキ、それこそ数多くの植物が冬場に赤い実を付けて、鳥だけでなく人の目を引き付けています。

ナンテンは、それだけでは終わりません。
実はこの果実には微量ですが毒が含まれているので、野鳥でも一気に食べるとおなかを壊します。
(人間にとっても微量ですが有毒な物質が含まれています。)

さらに実の大きさはヒヨドリやジョウビタキといった鳥が丸飲みできる大きさになっています。
胃に入っても硬い殻に覆われた種は消化されないまま、鳥の糞と一緒に様々な場所に落されていきます。

ナンテンの実に毒が含まれているのは、この分布の範囲をより広めるためだと考えられています。

つまり、一度に大量に食べられてしまうよりも、少ない量を何度も食べてもらった方が、より種が生き延びる確率が高まるという訳で、
自分が生まれた場所から自由に動きまわることのできない植物が遂げた進化のすごさを、こんなところからも感じることができるのです。

森の中に生えている植物は、様々な形でその生息範囲を広げ、新たな世代を残そうと闘っています。
秋から冬にかけての季節は多くの植物にとって、生存をかけた旅立ちの季節なのです。


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