眠りの森

森+LABO 2014.01.23

あけましておめでとうございます。森+LABOです。

本年もよろしくお願いします。

さて新年初めの森+LABOは、厳しい冬を眠ってやりすごす生きものの不思議についてLABOします。

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雪の山を歩くツキノワグマ。
「あれっ、クマって冬眠しなかったっけ?」という疑問の答えは後ほど。

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「クマの冬籠もり」という言葉があるように、冬を「眠り」でやり過ごす生きものがいます。
ヘビやカエルなど体温を調節できない「変温動物」の他に、
リスやネズミ、コウモリといった小型の恒温動物です。
陸上性の哺乳類の約1/3が冬場を眠って過ごしています。

冬場は気温が下がるため、前述の変温動物は気温の下降に伴い動けなくなるので、
地面の中や水中の泥の中など安全な場所に隠れて過ごします。
この間、変温動物は仮死状態になり、外気温の上昇と共にゆっくりと目覚めていきます。

では恒温動物の場合はどうでしょう。
この恒温動物の眠りには2種類あって、一つが「コウモリ型冬眠」、もう一つが「クマ型冬眠」です。

コウモリ型冬眠とは、クマ以外の小型の恒温動物における冬眠の形を指します。
秋の間に食べられるだけの食べものを食べて、体の中に大量の熱量を蓄えて血中の血糖値を下げないようにします。
それから外気温とほぼ同じの0度近くまで体温を下げて仮死状態になり、
木の穴や洞窟など、外敵に襲われない安全な場所で冬を眠って過ごします。


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冬への準備に忙しい日本リス。
リスの場合は、冬の間中ずっと眠っているわけではなく、2週間程度のサイクルで覚醒~冬眠を繰り返しています。


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こちらはアカネズミ。これも冬眠する生きものです。
街の生きているドブネズミは冬でも餌に困らないので冬眠しません。


では「クマ型冬眠」とはどんなものなのでしょうか?

冒頭の写真であったように、クマは冬眠しますが、コウモリ型の冬眠に比べ、
体温もそこまで下がらず、平熱より5度下がる程度です。
そうすると眠りは仮死状態とまでは至らず、うつらうつらとした眠りなので、
大きな音や衝撃によって目覚めてしまいます。

眠りが浅いので、「クマの冬籠もり」という言葉があるように、
「クマは冬眠ではなく冬籠もりする生きもの」と言われてきましたが、
最近の研究ではクマも冬眠する他の生きものと同じように血液中に「冬眠ホルモン」が確認されるなど、
冬眠している生きものならではの特徴も見られるため、冬籠もりではなく冬眠である、
という説が一般的になっているようです。


*

生きものたちが眠りで厳しい冬を過ごすのは、冬眠状態になると、
体温が下がり、心拍数も減り、生命の維持にかかる熱量が極端に少なく済みます。
つまり「冬眠」や「冬籠もり」とは、冬の間に餌を取らないでも、
餌が多くなる春まで生き延びる確率を高めるために生命が遂げた進化の形なのです。

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