地下部へようこそ

森+LABO 2014.09.23

8月は台風の発生数が一番多くなる月。

近年は台風以外でも、記録的な大雨が各地で降り、その影響から大きな自然災害が発生しています。

木の生えていた山の斜面が土ごと崩れていく光景を、様々なニュースや特集番組等で目にした人も多いのではないでしょうか。

木が生えてしっかりしていそうな地盤が、なぜ大雨の影響で崩れてしまうのか。
今回は木の根が伸びている森の土中についてLABOします。

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そもそも木の根「地下部」は、どんな役割を担っているのでしょうか?

植物の地下部は主に2つ、1つは地面からの上の「地上部」を支える役割、
もう一つは養分や水分を吸収するという重要な働きをしています。

地上部の支持は主に太い根「支持根(しじこん)」が担い、
養分・水分の吸収は太い根から分岐した細い根「細根(さいこん)」が担います。
これらはそれぞれの役割を果たせるよう、地上部と合わせて成長していきます。
水平方向への成長を「根張り(ねばり)」といい、垂直方向への成長を「根の深さ」といいます。

しかし、根張りが地上部の枝の張っている範囲「枝張り(えだばり)」と同じかそれ以上になるのに対して、
根の深さは地上部の樹の高さ「樹高(じゅこう)」と同じではありません。
むしろその成長はかなり小さいものになります。
木の根は木の幹ほど垂直方向へ成長しないのです。

一般に根が深くまで成長する樹木は乾燥地に多く分布するものが多く、
浅い位置で根の成長が止まるものは水分の豊富なところに多く分布する種類といわれています。

地中に含まれる水分がどこに位置するかによって、水を求めて成長していく根の張り方が異なるということなのですが、
乾燥地では地中深くの地下水を求めて根が下へ下へと伸びていくのに対し、
水分量が豊富なところでは浅い位置で成長を止めても問題がない、ことの表れでもあります。


木の根は浅いもので50cmくらい、深いものでも1.5m程度。
よく「根がよく張った森林があれば土砂崩れを防げる」と言われていますが、
木の根の深さを考えれば、それにも限度があることがわかります。

森林が防げるのは根が張る範囲だけ、つまり「表層崩壊」の場合だけで、
木の根よりも深い場所で起こる「深層崩壊」では、根っこごと地面が崩落していくため、
森林による防災効果を期待することはできません。

森には落葉などが積もってできた表土があり、ふかふかのスポンジのような土にはたくさんの水を蓄えることができます。
また木の葉や枝、幹を伝わってゆっくりと雨が地面に染み込み、地下水に蓄えられたり、川へと流れ出していきます。
反対に何も植わっていない地面は乾燥して土が固くなり、降った雨や勢いよく地表を流れていくので、洪水や土砂災害の原因にもなります。
しかしそうは言ってもその効用は無限ではありません。

農林水産省(農村振興局農村環境課)では、地すべり災害を予防するために、
地すべりが起こる地域では昔からそういった災害を経験してきていることに着目し、
地域に伝わる地すべりの兆候に関する言い伝えや、その防止方法についてまとめています。

◇地すべり災害を予防・軽減するための活動の手引き ―住民の皆さんができる地すべり対策―
http://www.maff.go.jp/j/nousin/noukan/tyotei/t_zisuberi/pdf/yobou_tebiki.pdf

ぜひこういった手引き書を参考に、自分が暮らす地域についての知識を深め、
いざという時に大切な命を守れるようしておきたいものです。

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