きのこの森

森+LABO 2014.12. 1

秋を代表する食べ物と言えばきのこ。

今回はこの「きのこ」と「森」についてLABOします。

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そもそもきのこは植物ではありません。
胞子を出して増えていく「菌類」の一種です。
菌類は世界中のあらゆる場所に存在し、約7万種あるといわれています。

菌類はいくつかに分類され、その中でもきのこは「担子菌類(たんしきんるい」というものに分類されます。

担子菌類の大きな特徴は、きのこらしい傘の形にあります。
この傘の形をもったきのこは子実体(しじつたい)といって、果物で言えば「果実」にあたります。

地上で見えているきのこの本体は地下部に広がる「菌糸」です。

菌糸はその名のとおり、糸状の形をしていますが、肉眼で確認することが難しいほどの細さです。
人の髪の毛が100マイクロメートル(※1000マイクロメートルが1mm)なのに対し、
菌糸の太さはさらにその10分の1くらいしかないのです。

さらに細いだけでなく、この菌糸は半透明なので、薄暗い地面の中にあると肉眼ではほとんど確認できません。

きのこの本体と呼ばれる細くて半透明な菌糸は、何度も枝分かれしながら地下に広がっています。
地表に見えている「きのこ」だけ見るとなんだか小さなものに感じますが、
この本体も含めると実はきのこは巨大な生きものなのです。

そして多くのきのこは森と深い関係を持って生息しています。

たとえば「タマゴダケ」の菌糸は、地下部で木の根とつながっています。
特定の木(スダジイ、コナラ、アラカシ等)から養分をもらうかわりに、
菌糸からは土から吸収した水やミネラルを根に与えたり、
根を病気から守る役割を果たしています。

こういった関係を「共生関係(きょうせいかんけい)」といいます。

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菌糸の役割はそれだけではありません。
その他にも、地上に積もった落ち葉を腐らせて分解し、森の養分にして土に戻す「分解者(ぶんかいしゃ)」の役割も果たします。

そんな森と共生しているきのこなので、森に生えている木の種類によって、
生えてくるきのこの種類も変わってきます。

一番有名なのが、松と共生する「マツタケ」でしょうか。
アカマツの木と共生関係にあるこのきのこは、養分が少なく、少し乾燥気味の森を好んで成長していきます。
かつてアカマツが優占していた里山ではよく取れたので、庶民の味として親しまれていました。

しかし松の葉や枝を燃料として利用しなくなった頃から林床の富栄養化が進み、
マツクイムシが発生して松の枝枯れが起き、次第にマツタケの収穫が困難になって、
現在のような高級食材として定着したのです。


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きのこの種類は、日本だけでも4千種類もあり、種類によって生える場所が異なります。
その多くが森の木と共生しているので、マツタケのように共生関係にあった森の環境が変わってしまえば、
当たり前のようにあったきのこでも、ある年から生えてこなくなる可能性を持っています。

東山住宅地を囲む森はクヌギやコナラを中心にさまざまな種類の木で構成された「雑木林」です。
この森の中にもいろんな種類のきのこが生えていること、そしてそのきのこと森をつなぐ本体が
森の地下部を覆っていることに思いを巡らせてみると、秋の森の散歩がもっと楽しくなることでしょう。

なお、毒きのことそうでないきのこの判別は難しいものです。
くれぐれも安易にとって食べたりしませんように!!

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