旅する種たち~どんぐり~

森+LABO 2014.12. 1

どんぐりころころ、どんぐりこ♪

の童謡で有名などんぐり。
歌の通りに転がって広がることはそうないようですが、
どんぐりは枝から落ちていったところで根を下ろし、春を待って芽を出します。

落ちるだけの種は親植物の近くに落ちて、そこから芽を出すことが多いので、
1か所にまとまって大きな群れを作ります。
この群植の一番外側に生えた植物が群れの外に種を落とし、少しずつその範囲を広げていきます。

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東山住宅地に残るスダジイも、ドングリによって生まれた木です。
今は1本だけになっていますが、かつてはスダジイの周りには同じスダジイの木がもっとあったことでしょう。

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スダジイのドングリは3つに裂ける「殻斗(かくと)」に包まれています。
その実は柔らかく、どんぐりの中では珍しく生でも食べられます。

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どんぐりのなる木は、日本ではスダジイをはじめ17種類ほどあります。
その代表がナラ類(コナラ、ミズナラ、アラカシ、シラカシ等)とシイ類(スダジイ、マテバシイ等)です。

アラカシやウバメガシといったカシ類は常緑樹(一年を通して緑色の葉をつけている植物)ですが、
落葉するクヌギやミズナラ、カシワなどと雄花の付き方が垂れ下がる種類なので、同じナラ類に分類されます。

おもしろいことに同じナラ類のどんぐりでも、ミズナラはどんぐりを落とすだけでなく、
動物の助けをかりで遠くへ運んでもらっています。

ミズナラは東北や北海道、九州では標高の高い山に生えている木です。
こういった森の住民でどんぐりを食べるのは
シマリスやエゾリスやカケスなどの小動物なのですが、彼らは地面にどんぐりを埋めたり、
巣にもちかえって蓄えておく性質をもっています。
どんぐりをくわえて運ぶ最中に落としたり、埋めたどんぐりを食べ忘れたりすることで、
ミズナラの林が広がっていくともいわれています。

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写真はクルミを運ぶエゾリス。厳しい冬を乗り越えるため、秋のうちに食糧を蓄えておきます。


一方で関東の里山でよくみられるクヌギが生えている場所に住むアカネズミなどは
巣に持ち帰らずに、その場でどんぐりを食べていしまいます。


動物の性質によって、同じような種を持つ植物の生息範囲も変わっていくとは。
自然界の共生関係は、環境に合わせて少しずつ進化しているのでしょう。

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