『森のある暮らしのすすめ』の最近の記事
暮れゆく森
冬の森は紅葉も終わり、静かな静寂に包まれます。

葉を落とした木々は静かな眠りにつき、次の春を待ちます。
ちらつく雪に覆われ、その静けさはさらに深みを増していきます。

雪が降ると、いつもより静かな感じがするのは気のせいではありません。
雪の結晶はそもそも複雑な構造をしており、
その複雑な形が降り積もることで多孔質な空間を作ります。
雪が降り積もると、音はその中に吸収され、複雑な構造体の中を反射しながら減衰し、
音の波の強さが弱まっていきます。
だから雪が積もった場所では、そうでないところに比べ、より静かに感じるのです。
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新しい年まであと少し。
気ぜわしい年の瀬の中で気持ちをリセットしたい時には、
雪の森を散歩してみるのもいいかもしれません。
秋の日は釣瓶落とし
9月も後半に入り、日が暮れるのも早くなってきました。
「秋の日はつるべ落とし」とは秋の日没の早さを表した諺ですが、まさにそんな風情ですね。
日が長いといえば夏至、日が短いといえば冬至ですが、
夏至は日の出が早く、日の入りが遅いため日が長く、
冬至は日の出が遅く、日の入りが早いため日が短くなります。

秋はどうかというと、日の出も日の入りも早い時期。
さらにいえば、日の入りは夏至を境に冬に向けてどんどん早くなっていきます。
(春はこの逆で、夏に向けて日の出がどんどん早くなるのが特徴です。)
ただ夏の名残りもあり、春に比べると平均気温は10度ほど高く、よりすごしやすい季節です。

夏の森は暑いし、虫がいるし、と思って近付けなかった人も、涼しくなった秋は絶好の散策シーズンです。
紅葉が始まる前の森の中へ、お天気の良い日は出かけてみましょう。
静かな森で
冬の森は深々とした静寂に包まれます。
春から夏にかけておおい茂っていた緑も、秋を越えてほとんど散って、閑散としたたたずまいになります。
しかしそれは植物が厳しい冬を越えて、生命をつないでいくためのひとつのプロセスなのです。

植物は、春から晩夏までの間に次の春を迎えるための新芽を形成し、冬を無事に越せるようその芽に鎧をまとっています。
「冬芽(ふゆめ)」と呼ばれるもので、木の種類によってその形状はさまざまです。

冬芽には色々あり、葉を落とす落葉樹だけでなく、常に緑色を保つ常緑樹にも冬芽が存在します。
種類もさまざまで、白くて柔らかい毛皮のような表皮に覆われたコブシやヤナギの仲間たち。
ねばねばとした粘着質の表皮に覆われたトチノキ。
小さな芽を持つケヤキやコナラ。
寒さだけでなく、冬季の乾燥も植物にとっては大きな問題です。
冬芽をつけた植物の多くは、この乾燥をやり過ごすために芽を外皮で覆い、水分の蒸発を防いでいるのです。

暮れていく森の中で、植物たちは眠りにつき、やがて来る春を静かに待っています。
一見寂しげに見える森の中では、無数の命が芽吹く日を夢見ているのです。
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今年も残すところ、あとわずか。
皆様にとって新しい年がすばらしいものになりますようお祈り申し上げます。
来年も引き続き、森+LABOをよろしくお願いします。