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森+LABO森のある暮らしのすすめ 2014.12.24
まだまだ暑い日が続いていますが、時折吹く涼しい風に秋の気配を感じる今日この頃。
そろそろ夏も終わろうとしています。
早いもので、少し標高の高い森では、きのこ狩りが始まっています。
今回は「きのこ」についてLABOします。
色鮮やかなタマゴダケ。
夏から秋にかけて、日本のほぼ全土の広葉樹林や針葉樹林に点在します。
真っ白な外皮膜に包まれて、まさに「卵」のような様相で表れますが、成長するにしたがって「かさ」や「柄」が伸びていき、
この膜はコップ状のつぼのように柄の足元に落ちていきます。(写真にも写っていますね。)
成長するほどかさが広がり、ほとんど垂直まで広がっていきます。
「タマゴダケ」は食べられますが、「ベニテングダケ」という有毒きのこと似ているので、自信のない人は取って食べたりしないように。
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きのこは「木野子」とも書くように、木やその集合体である林や森の環境と密に結びついている菌類です。
きのこを出す菌類にはさまざまな種類があり、木の幹や大枝の中に菌が入ってしまうと、木の中が腐り、やがて枝や幹が折れてしまうものもあります。
よくみかけるのが「サルノコシカケ」と呼ばれるきのこです。
「サルノコシカケ」という名の通り、猿が腰掛けるのにちょうどよい半円型の子実体(しじつたい、いわゆる「きのこ」と呼ばれる部分)が、木の幹に生えてきます。
サルノコシカケ科に属するきのこの多くは木材を分解して栄養とするので、樹齢が大きく弱った木に入りこみ、倒木の原因になったりします。
スーパーで見かける「マイタケ」も、実はこのサルノコシカケ科に分類されるきのこです。
味が良いので、これを見つけた人は喜んで踊り出すことから「舞う(い)茸」という名前がついたと言われるほど。
クリ、ミズナラ、シイ等の高齢で大きな木の根際に生えるといった特性があり、毎年同じ場所に発生します。
次に雑木林でみかけるのが、これ!
もうわかりますよね?
そう、「シイタケ」です。旬は春(3~5月)と秋(9~11月)。
本格的に食用にされたのは室町時代で、栽培が始まったのは江戸時代頃から。
自然の環境では、クヌギやシイ類、子なら、ミズナラ、クリといった広葉樹の枯れ木に発生します。
このシイタケやナメコ、ナラタケのように、枯れ木に生えるきのこは森の中の倒木や枯れ木を分解し、土に変えるといった重要な役割を担っています。
有機物を分解する役割を担った生きものを「分解者」と呼びます。
この分解が起こることで、森の地表面には「表土」と呼ばれる層が堆積していきます。
表土は植物だけでなく、多くの土壌生物の棲みかにもなり、森の基盤を作っていきます。
この表土が自然に堆積していくには、厚さ1cmで100~数百年かかると言われています。
そのことからだけでも、どれだけ重要で、かけがえのないものが森の中にあるのかが伺えますよね。
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きのこは生えてくる条件、つまり必要な環境が整わないと発生することのできない非常にデリケートな生きものです。
毎年同じ場所に生えてきていたとしても、例えば夏が暑すぎたり、寒すぎたり、雨が多かったり、少なかったり、
気象条件によって生えてこないことがあります。
もちろん森の中に生えている木の種類によって、発生するきのこも変わってきます。
しろうとが毒キノコを見分ける方法は、ないと言っていいので、食べるためのキノコ狩りは安易にオススメしませんが、
その森がどんな森なのかを想像しながら、涼しくなった森の中を歩くのも、夏の終わりの楽しみと言えるのではないでしょうか。
イベント報告森+LABO森のある暮らしのすすめ 2014.12.24
こんにちは、森+LABOです。
先週末の日曜日、東京森都心の東山住宅地の集会所にて、第2回目となる体験イベントを開催しました。
今回のイベントのテーマは「草木染め」。
イベントのご報告と合わせて、今週はこの不思議で奥深い、草木染めについてLABOします。
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草木染めとは、自然の素材をあまり手を加えずに染料として用いる染物です。
化学染料を使った工業的な染物に対して、天然素材を染料とした染物全般を意味します。
東山の森の中の素材を使って、ハンカチを染める体験をしたのですが、
素材として選んだのは「クサギ(臭木)」。
葉っぱをちぎると独特の臭いが森に広がることから、こんな名前がついている植物です。
集会所のすぐ脇の「そらみの森」にたくさん生えています。
まずは素材集めから、ということで、参加者の皆さんに「クサギ」の切り出しから体験していただきました。
大人が柵の外側へ出て、クサギの枝を切り出していきます。

それを受け取ったこどもたちが、茎から葉っぱを外していきます。
クサギは枝も葉も、10月頃になる実もそれぞれ違った色の染料になる珍しい植物です。
今回はその中でも、葉だけを使って染液を作るので、葉っぱをたくさん集めてもらいました。
モリモリと働く子どもたち。
次に、とってきた葉っぱの重さを計って、必要な分だけ水洗いします。
ここでも働きものの子どもたち。
モリモリと葉っぱを洗っていきます。
みんなが一生懸命集めたクサギは、集会所のコンロを使って、2台のお鍋で煮詰め、染液にしていきます。
写真にある鍋はコンロにかかる最大の大きさで、16リットルくらい入ります。
そこに入る分だけのクサギを入れて、クタっとしてきたらさらに葉っぱを追加し、濃い液を作りました。
11リットルのステンレス容器に、8リットルくらいの水を入れ、煮出したあとは、6リットルくらい取れました。
乾いたタマネギは材料が水を吸ってしまうので、途中で少し水を足しながら煮ていきました。
生のクサギは葉っぱが水分を持っているので、思ったより染液の量が取れました。
今回は参加者が多かったので、より濃い液を作る必要があり、30分以上煮ながら新しい葉を追加してみました。
そんな染液作りと並行して、今度は「絞り」の作業に取り掛かります。
木の実やボタン、板や紐、ゴムなどを使って、ハンカチに模様を作っておきます。
講師の米倉さんによるポイントは「ゴムや紐で木の実を入れて絞る場合、きつめに縛ること。」でした。
きつく縛ることで染液が入る部分とそうでない部分の色がハッキリ分かれて、
つけた模様がより美しく浮かび上がるそうです。
みんな悩みながら、それぞれに模様を入れていきます。
絞りが終わったら、ハンカチを水につけておきます。
これは「地入れ(じいれ)」という作業で、染液を布に染み込みやすくするために行います。
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そして、いよいよ、本日のメインイベントの「染め」が始まりました。
一見、鍋を和気あいあいとつついているかのように見えるでしょうが、違います。
「染め」はまず地入れから出したハンカチを、午前中に煮出して作った染液に20分漬ける作業から始まります。
その間、絞りに木の実を入れて作ったりすると布が浮いてきてしまうので、
よく染まるように浮いてきた布を液に沈める、ムラにならないよう布を動かすといった作業をしているところです。
さらに、煮出した染液の温度は60度もあるので、みんな割り箸を使っています。
ちなみに今回の染液はクサギとタマネギの皮の2種類。
途中で使う「媒染(ばいせん)」を「みょうばん」と「鉄」の2種類にしたので、計4種類の色に挑戦です。
ハンカチは1人2枚使ってもらえたので、1人2色を選んで染めていきました。
どんな色になるかな~。
ちゃんと染まっているかな~。
チェックチェック。
染液に20分漬けたら、今度は媒染液に移動します。
媒染液には「ミョウバン」と「木酢酸鉄」を使いました。
植物に含まれる色素は化学染料に比べるととても少ないので、布に固定しずらいのです。
そこでこの「媒染(ばいせん)」という工程を入れて、金属イオンとの結合で布に色素を定着させます。
かつ色素と金属イオンとの化学反応によって、染液とは違った色味に変化します。
ミョウバンにはアルミが含まれているので、染液がより鮮明な色に。
鉄を使うと染液から若干黒く変化していきます。
同じ染液を使っても、「媒染」を変えるとまったく色になるので、この変化の多様さも草木染めの面白さと言えますね。
最後に薄めた染液に5分つけ、絞りを外していきます。
「固く絞るように」という教えを守ってつけた絞りですが、濡れた状態で外すのは意外に大変。
染液を含んだゴムがはねたりして、実は一番服が汚れるのが、この作業でした。
絞りを外したら、水洗いして、余分な染料を落とします。
どこまで色が落ちていくのか、つけた模様がハッキリ出ているのか、緊張の瞬間です。
ドキドキ~
完成したハンカチは、水気を切って干していきます。
乾いたら完成です!
思うように染まっていなかったり、思ったより上手に模様が出ていたり、
人によって出来上がりは違っていましたが、この予想のつかない感じが「草木染め」の醍醐味とも言えます。
幸せの黄色いハンカチは「タマネギの皮×ミョウバン」の組合わせで染めたもの。
こげ茶は「タマネギの皮×木酢酸鉄」の組み合わせです。
お試しにシルクのシャツも染めてみました。
植物から取った色素はタンパク質につくため、
蚕が体内で作りだすタンパク質を主成分とした絹は草木染めでも染まりやすいのです。
ちょっと裏話をすると、今回使った木綿の場合は、素材にタンパク質が含まれていないので、
事前に「豆乳」などにつけて、布にタンパク質を染み込ませると、染まりやすくなります。
でも、豆乳は布に均一に染まりにくいので、ムラになったりすることもあるので、気をつけて下さい。
今回は、絞りをするので、染まないところもあったり、もともとむらむらに仕上げたりするので、この作業は省きました。
お家で草木染めをする時に「豆乳」等を使わない場合は、何回も染め重ねると濃い色に仕上がります。
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最後にみんなの染めたハンカチを見て、講師の米倉先生に講評していただきました。
完成品の前で、記念撮影。
参加いただいた皆さま、お疲れ様でした。
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みんなで素材を取るところから体験した「クサギ」は、ミョウバンと組み合わせて薄い緑になりました。
クサギ×木酢酸鉄の組み合わせは、緑というより、茶が強めに出ていました。
クサギを使った草木染めを体験してわかったことは、
植物には緑色が多いのに、緑の色素を布に固定させるのはなかなか大変だということ。
今度は媒染を鉄ではなく、銅にして再チャレンジしてみたい、
クサギの実を使って青い染物にも挑戦してみたいなど、
今後の活動にさらなる意欲が湧いてきた夏の一日となったのでした。
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これは森+LABOのスタッフが、みんなが染めた後の染液で染めたハンカチ。
(玉ねぎの皮×木酢酸鉄の組み合わせ)
地入れした布をしっかり絞らないと、染液が水分で薄まってしまったり、
沢山の布を次々に入れると、どんどん布に色素が吸い取られて行って、
一番最初の濃さに比べると、染液は徐々に薄まっていきます。
でもその分、玉ねぎの皮そのままのような微妙な風合いが出て、とても美しい仕上がりとなりました。
東山の森の恵みを使って体験する「草木染め」。
植物を採取する時期によって、染め上がりの色が変わってくるので、
また違う季節に改めて挑戦してみたいですね。
関東地方では梅雨も明け、暑さが本格化してきました。
今回は暑い夏を彩る花たちをご紹介していきます。
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まずは京王堀之内駅から続く街路樹でお馴染みの「サルスベリ(百日紅)」。
夏を代表する「木に咲く花」です。
「サルスベリ」という名前の由来になっている、猿も滑り落ちそうなツルっとした幹。
さわってみるとヒンヤリします。
すべての樹木がさわってヒンヤリするわけではありません。
そうなると、ひんやりする木とそうでない幹の違いはどこにあるのでしょうか?
「樹木ハカセになろう/石井誠治著(岩波ジュニア新書)」の中に、その答えが書いてありました。
人が冷たさや温かさを感じる主な要因として、熱の移動があげられます。
さわってひんやりするものは、さわった手のひらから触った物体に熱が移動する速度が早く、
さわって温かみを感じるものは、さわった手のひらから熱が移動する速度が遅いのです。
コナラやクヌギのように、さわって温かさを感じる木の幹は樹皮が厚く、コルク層を多く含みます。
コルクは空気をたくさん含む発泡スチロールに似た構造をしています。
動かない空気は熱を伝えづらいので、手のひらの熱が移動する速度が遅く、温かく感じます。
反対にサルスベリのようにさわってヒンヤリする樹種は樹皮が薄く、
皮のすぐ内側にある葉緑素はコルク層と違って生きている細胞です。
その生きている細胞は、水分に満ちています。水は空気とは真逆で、熱を伝える力が大きいので、
薄い樹皮を通して、私たちが触った手のひらから体温がすばやく移動し、「ヒンヤリ」と感じるのですね。
街の中で、街路樹として、また庭木としてよく見かけるサルスベリ。
暑くて倒れそうになった時には、ひんやりした幹を触ってみるといいかもしれません。
さてお次は、多摩ニュータウン東山住宅地の街路樹にもなっている「ヤマボウシ」。
アメリカハナミズキの方が街路樹として数多く出回っていますが、二つとも同じミズキ科の植物です。
「ヤマボウシ」は日本の在来種で、「アメリカハナミズキ」は名前の通りアメリカ原産の樹木です。
「白い花が美しい、、、。」と言いたいところですが、白い部分は花ではなく「総苞片」と呼ばれるもので、
真ん中にある突起状の部分が花です。小さな花が20~30個集まって咲いています。
ヤマボウシは本州、四国、九州の山地の林内や草原などに自生している木です。
街路樹として用いられるだけでなく、器具や下駄用の材としても用いられることがあります。
実も甘く、食用にもなるので「ヤマグワ」とも呼ばれます。
9月から10月には赤く熟すので、運良く見かけたら味見してみてください。
森の中にも、夏の花が咲いています。
まず代表的なのがこの花。キツネノカミソリです。

一見すると百合(ユリ)の花に似ていますが、「ヒガンバナ(彼岸花)」と同じヒガンバナ科の植物です。
茎、根の部分にアルカロイド性の毒を持っているため、誤って(?)食べたりすると吐き気、腹痛、下痢などを引き起こします。
気をつけてくださいね。
花が咲くのは8~9月頃ですが、その頃になると名前の由来でもある「カミソリ」のような形をした葉は全て落ちてしまいます。
暗めの林床に、オレンジ色の花が映えるので、夏の森の彩りには欠かせません。
森の中に咲く花は、園芸店の店先に並ぶ外国生まれの花や品種改良された園芸種に比べ、
色味こそ派手ではありませんが楚々とした魅力を持っています。
例えば、「オカトラノオ」という穂状に小さい白い花をつけるものや、
ホタルブクロという鐘状の花をつけるものなどがあります。
(この花の中に蛍を入れて持って帰ったことから「蛍袋(ホタルブクロ)」という名前がついた、という説もあります。)

ちなみにホタルブクロの学名は「Campanula punctata」。
campanella(カンパネラ)とは、教会のそばに立つか鐘塔、または鐘のことを指します。
転じて、風鈴草や釣鐘草等のキキョウ科の科名を「またcamanula(カンパニュラ)」と言うそうです。
園芸種として流通している「カンパニュラ(ツリガネソウ)」は、
ホタルブクロと同じ同じキキョウ科ホタルブクロ属の植物ではありますが、
地中海沿岸地方原産の種を改良したものです。
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暑さを避けて森へ行ったら、夏を彩る小さな花たちを探してみてください。
※夏の森を歩く際の「ちょこっと」アドバイス※
・暑い時期の藪には蛇がいるかもしれないので、不用意に藪に入らないようにしましょう。
・そして夏の森歩きにも、サンダルじゃなく、足首まである靴を履いておきましょう。