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森に染まる、森で染める
こんにちは、森+LABOです。
先週末の日曜日、東京森都心の東山住宅地の集会所にて、第2回目となる体験イベントを開催しました。
今回のイベントのテーマは「草木染め」。
イベントのご報告と合わせて、今週はこの不思議で奥深い、草木染めについてLABOします。
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草木染めとは、自然の素材をあまり手を加えずに染料として用いる染物です。
化学染料を使った工業的な染物に対して、天然素材を染料とした染物全般を意味します。
東山の森の中の素材を使って、ハンカチを染める体験をしたのですが、
素材として選んだのは「クサギ(臭木)」。
葉っぱをちぎると独特の臭いが森に広がることから、こんな名前がついている植物です。
集会所のすぐ脇の「そらみの森」にたくさん生えています。

まずは素材集めから、ということで、参加者の皆さんに「クサギ」の切り出しから体験していただきました。
大人が柵の外側へ出て、クサギの枝を切り出していきます。

それを受け取ったこどもたちが、茎から葉っぱを外していきます。
クサギは枝も葉も、10月頃になる実もそれぞれ違った色の染料になる珍しい植物です。
今回はその中でも、葉だけを使って染液を作るので、葉っぱをたくさん集めてもらいました。
モリモリと働く子どもたち。


次に、とってきた葉っぱの重さを計って、必要な分だけ水洗いします。
ここでも働きものの子どもたち。
モリモリと葉っぱを洗っていきます。

みんなが一生懸命集めたクサギは、集会所のコンロを使って、2台のお鍋で煮詰め、染液にしていきます。
写真にある鍋はコンロにかかる最大の大きさで、16リットルくらい入ります。
そこに入る分だけのクサギを入れて、クタっとしてきたらさらに葉っぱを追加し、濃い液を作りました。

11リットルのステンレス容器に、8リットルくらいの水を入れ、煮出したあとは、6リットルくらい取れました。
乾いたタマネギは材料が水を吸ってしまうので、途中で少し水を足しながら煮ていきました。
生のクサギは葉っぱが水分を持っているので、思ったより染液の量が取れました。
今回は参加者が多かったので、より濃い液を作る必要があり、30分以上煮ながら新しい葉を追加してみました。
そんな染液作りと並行して、今度は「絞り」の作業に取り掛かります。

木の実やボタン、板や紐、ゴムなどを使って、ハンカチに模様を作っておきます。
講師の米倉さんによるポイントは「ゴムや紐で木の実を入れて絞る場合、きつめに縛ること。」でした。
きつく縛ることで染液が入る部分とそうでない部分の色がハッキリ分かれて、
つけた模様がより美しく浮かび上がるそうです。
みんな悩みながら、それぞれに模様を入れていきます。
絞りが終わったら、ハンカチを水につけておきます。
これは「地入れ(じいれ)」という作業で、染液を布に染み込みやすくするために行います。
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そして、いよいよ、本日のメインイベントの「染め」が始まりました。
一見、鍋を和気あいあいとつついているかのように見えるでしょうが、違います。
「染め」はまず地入れから出したハンカチを、午前中に煮出して作った染液に20分漬ける作業から始まります。
その間、絞りに木の実を入れて作ったりすると布が浮いてきてしまうので、
よく染まるように浮いてきた布を液に沈める、ムラにならないよう布を動かすといった作業をしているところです。
さらに、煮出した染液の温度は60度もあるので、みんな割り箸を使っています。

ちなみに今回の染液はクサギとタマネギの皮の2種類。
途中で使う「媒染(ばいせん)」を「みょうばん」と「鉄」の2種類にしたので、計4種類の色に挑戦です。
ハンカチは1人2枚使ってもらえたので、1人2色を選んで染めていきました。

どんな色になるかな~。

ちゃんと染まっているかな~。
チェックチェック。
染液に20分漬けたら、今度は媒染液に移動します。
媒染液には「ミョウバン」と「木酢酸鉄」を使いました。
植物に含まれる色素は化学染料に比べるととても少ないので、布に固定しずらいのです。
そこでこの「媒染(ばいせん)」という工程を入れて、金属イオンとの結合で布に色素を定着させます。
かつ色素と金属イオンとの化学反応によって、染液とは違った色味に変化します。
ミョウバンにはアルミが含まれているので、染液がより鮮明な色に。
鉄を使うと染液から若干黒く変化していきます。
同じ染液を使っても、「媒染」を変えるとまったく色になるので、この変化の多様さも草木染めの面白さと言えますね。

最後に薄めた染液に5分つけ、絞りを外していきます。
「固く絞るように」という教えを守ってつけた絞りですが、濡れた状態で外すのは意外に大変。
染液を含んだゴムがはねたりして、実は一番服が汚れるのが、この作業でした。

絞りを外したら、水洗いして、余分な染料を落とします。
どこまで色が落ちていくのか、つけた模様がハッキリ出ているのか、緊張の瞬間です。

ドキドキ~

完成したハンカチは、水気を切って干していきます。
乾いたら完成です!

思うように染まっていなかったり、思ったより上手に模様が出ていたり、
人によって出来上がりは違っていましたが、この予想のつかない感じが「草木染め」の醍醐味とも言えます。

幸せの黄色いハンカチは「タマネギの皮×ミョウバン」の組合わせで染めたもの。
こげ茶は「タマネギの皮×木酢酸鉄」の組み合わせです。

お試しにシルクのシャツも染めてみました。
植物から取った色素はタンパク質につくため、
蚕が体内で作りだすタンパク質を主成分とした絹は草木染めでも染まりやすいのです。
ちょっと裏話をすると、今回使った木綿の場合は、素材にタンパク質が含まれていないので、
事前に「豆乳」などにつけて、布にタンパク質を染み込ませると、染まりやすくなります。
でも、豆乳は布に均一に染まりにくいので、ムラになったりすることもあるので、気をつけて下さい。
今回は、絞りをするので、染まないところもあったり、もともとむらむらに仕上げたりするので、この作業は省きました。
お家で草木染めをする時に「豆乳」等を使わない場合は、何回も染め重ねると濃い色に仕上がります。
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最後にみんなの染めたハンカチを見て、講師の米倉先生に講評していただきました。

完成品の前で、記念撮影。

参加いただいた皆さま、お疲れ様でした。
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みんなで素材を取るところから体験した「クサギ」は、ミョウバンと組み合わせて薄い緑になりました。
クサギ×木酢酸鉄の組み合わせは、緑というより、茶が強めに出ていました。
クサギを使った草木染めを体験してわかったことは、
植物には緑色が多いのに、緑の色素を布に固定させるのはなかなか大変だということ。
今度は媒染を鉄ではなく、銅にして再チャレンジしてみたい、
クサギの実を使って青い染物にも挑戦してみたいなど、
今後の活動にさらなる意欲が湧いてきた夏の一日となったのでした。
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これは森+LABOのスタッフが、みんなが染めた後の染液で染めたハンカチ。
(玉ねぎの皮×木酢酸鉄の組み合わせ)

地入れした布をしっかり絞らないと、染液が水分で薄まってしまったり、
沢山の布を次々に入れると、どんどん布に色素が吸い取られて行って、
一番最初の濃さに比べると、染液は徐々に薄まっていきます。
でもその分、玉ねぎの皮そのままのような微妙な風合いが出て、とても美しい仕上がりとなりました。

東山の森の恵みを使って体験する「草木染め」。
植物を採取する時期によって、染め上がりの色が変わってくるので、
また違う季節に改めて挑戦してみたいですね。
ヒョロヒョロの森
先週の日曜日、森+LABO初のイベントを行いました。
午前中は自然観察会、昼食の後はにしきの森に入って、樹名板をつけました。
このイベントに参加してくれた皆さま、お疲れ様でした。
今回はこの「にしきの森」について、LABOしていきます。

キリの大木。ちょうど紫色の花を咲かせていました。
■にしきの森とヒョロヒョロの木
にしきの森にある木は、みんなヒョロヒョロと背が高く、葉っぱは上の方にしか付いていません。
これはもともとこの森が、竹に覆われていたことの名残りです。
2010年に撮った写真を見てみると、今よりもっと緑がこんもりと茂っています。
一見、緑豊かな森に見えます。

しかし、この場所を覆っていた竹を伐採したところ、こんな状態になってしまいました。

あれっ??(2012年5月13日撮影)

あれあれ??(2012年5月13日撮影)
竹以外の木がこんなに少なかったなんて!!
ここは保全のために残された森なので、竹以外の木は切っていません。
手前にある小さい木は、にしきの名にふさわしく、モミジやアカシデ、ヤマザクラを移植したもの。
そう考えると、どれだけこの森が竹に覆われていたのか、よくわかりますよね。
竹に覆われた森の中で、植物は生き残るための光を求め、上へ上へと伸びていきます。
そのためこの森の木は、みんなヒョロヒョロと背が高くて、上の方にしか葉っぱが付いていないのです。

竹を切り、その根も抜きましたが、後に笹が生えてきました。
その笹に森が覆われてしまうと、木の実生(みしょう、※種から発芽した小さな芽)が育たないので、
笹も定期的に刈っています。
そうすると、一年後には、、、。

こんなに緑が生い茂る、明るい森へと姿を変えていました。(2013年5月19日撮影)
■にしきの森の「いま」と「これから」
先日のイベントでは、参加してもらった皆さんに、自分の好きな木を1本選んでもらい、
樹名板を作って、付けてもらいました。
皆さんに選んでもらった木は、にしきの森の過去、現在、未来を象徴するもの。
大きな木は、竹に覆われていた森の中でもたくましく生き残り、命を繋いできた木です。

樹名板には木の名前だけではなく、書いた人の名前と日付も入れてもらいました。
特に防腐処理をしていない木片に絵の具で字を入れただけのシンプルな作りなので、
雨風にさらされ、いつか朽ちていくと思います。
でも、この木を選んだこと、そして自分で選んだ木のことはずっと心に残ります。
そして、竹がなくなった林床には光が届き、新たな命がすくすくと成長していました。

まだ小さな木と小さな子供たち。
人と森が一緒に成長していける場所が家の近くにあるなんて、素敵ですよね。
ヒョロヒョロの木だけが残された「にしきの森」に、人の手が入ったことで、光がさしこみ、
竹という一種類の植物で覆われていた環境も、少しづつ多様性を取り戻しています。
きっと何十年か経てば、この森はその名にふさわしく、春はサクラ、秋は紅葉が美しい
錦の森へと成長していることでしょう。