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高い森、涼しい森
こんにちは、森+LABOです。
夏になると涼しさを求めて山へ、森へと出かけたくなります。
涼しい避暑地の代表と言えば「高原」ですよね。
ところで同じ森でも、里山にある森よりも、高原にある森のほうが涼しいのはなぜなのでしょうか?
今回のこの「高度の違い」についてLABOします。

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低地でも、森が涼しいのはそこに生えている植物のおかげです。
植物は夏の厳しい日ざしを受けても、建築物(コンクリートやアスファルト、タイルや鉄など)のように熱くなりません。
例えば太陽の熱を受けて熱くなったアスファルトの表面温度が70度近くあっても、
葉の表面は34度程度。葉の裏側に至っては、さらに2~3度低い温度に保たれています。
植物は自身が生きて行くために必要な栄養素を光合成によって作り出します。
その際には、根から吸った水分と受けた太陽エネルギーを利用しているのですが、余分な水分を葉から放出します。
この水分が蒸発する際に葉のまわりの熱を奪うので、その周囲の温度が下がり、
葉の表面温度も構造体のように熱くなりすぎることなく、気温よりも低い温度で保たれていきます。
これを「蒸散(または蒸発散)」と言い、一般的な植物では、太陽から入射する熱のほぼ半分は蒸散に伴って失われています。
蒸散によって冷やされた空気は樹木の下へと下がり、その熱の移動が、木陰へ微かな風を起こします。

夏の暑い日に樹木の下へ行くと、なんとなく涼しく感じるのは、気のせいではなく、植物による確かな熱の移動(やりとり)が起こっているからなのです。
さらにこの効果は、森のように植物がまとまって存在することで、より大きなものとなっていきます。
詳しくは「(森+LABOバックナンバー)涼しい風の吹くまち~森が涼を生む~」をどうぞ。
でも同じ森でも、高原の森の方が涼しいのはなぜでしょうか?
それは単純に森の「高度の違い」によります。

ポイントは「気圧」と「空気」です。
気圧とは「気体の圧力」のこと。これだけだとなんのこっちゃ?ですよね。
海の中をイメージすると分かりやすいのですが、深海ほど、上にある水の重みがかかる分、水面に比べて水圧が高くなります。
これを地上で置き換えてみます。
空気も物質なので、質量をともなっています。
地球を覆っている大気の重さ分、空気には圧力がかかっています。
つまり自分の上にある大気の量が多いほど圧力が多くかかり、大気の量が少なくなるほどかかる圧力が少なくなります。
私たちが普段生活している東京森都心と富士山を例に比較すると、東山ニュータウンの一番高い場所の標高は約140m。
富士山は山頂で3776m、樹海が広がる1合目~5合目でも1400m~2300mほどあります。
1合目と東山の一番高い場所の高低差は約10倍もあるわけです。
気圧が低くなると含まれる空気の濃度が下がります。
含まれる空気の濃度が薄くなると、空気が膨張し、空気の温度が下がります。
高度が100mごとあがるごとに温度は0.65度ずつ下がるので、10倍の高度差がある場所では6.5度違います。
富士山の山頂では地上から25度も気温が低くなるわけです。
これが高原にある森が涼しい理由です。
月は東に 日は西に
こんにちは、森+LABOです。
寒さの中にも春の気配が入り込み、ぽかぽか陽気にうっとりする日も増えてきました。
今回は東山のまわりで目にすることの多い「菜の花」について紹介します。

日本における春の花と言えば「桜」ですが、「菜の花」も代表的な春の花です。
しかし「菜の花(ナノハナ)」というのは、アブラナ科アブラナ属の植物全般の総称であることは意外と知られていません。
日本だけでもその種類は300種ほど。
「菜の花」は、花、茎、葉の全てを食することができ、種からは「菜種油」が取れるという
作物としてとても優秀な植物です。
食用としては小松菜の菜の花は苦味が少なく、マイルド。
菜の花を食用にする場合は、花が咲く前がおススメ。上から10~15cmくらいのところで切り、お湯で茹でます。
湯で時間は2~3分。
菜の花が含む水溶性のビタミンCが流れてしまわないよう、水にあげる時もさらしすぎないように気をつけましょう。
冷ました菜の花を食べやすい大きさに切り、塩少々と醤油を小さじ1入れた納豆と合わせても美味です。
どうぞお試しあれ。
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「菜の花や 月は東に 日は西に」
(訳)一面に続く菜の花畑、東の空からは月が昇り、西には赤い夕陽が沈んで行く。
この歌は与謝野蕪村の読んだ歌で、菜の花が登場する歌の中でも特に有名です。
満月前後の菜の花畑の夕景を、画家でもあった蕪村が絵画的にとらえた句だそうで、
季語は「菜の花」、季は春。
今年の春、菜の花畑に出会ったら、蕪村の句を思い出して、足を止めてみてはいかがでしょうか。
土の中で目覚めを待つもの
こんにちは、森+LABOです。


1月に入り、寒さも増してきました。
今日はそんな寒さが厳しい、冬の森の「土の中」についてLABOしていきます。

こんな風に霜が降りても、地中は意外とあたたかいってご存知でしょうか?
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一月に入り、雪が降る日もあったりして、一段と寒さが厳しくなりました。

しかしそんな寒い冬でも、そして暑い夏でも、実は地中の温度というのは一年を通して同じくらいに保たれています。
例えば10cmくらいの地中では、一年を通して5度くらい。
東京では10mくらいの場所だと約17度くらいで一定しています。
この比較的浅い部分(数m~200mくらいまで)にある熱エネルギーのことを「地中熱」と言います。
「地中熱」は太陽熱で暖められた地面の熱が地中へ伝わり、蓄えられたものです。
この変化の少ない地中熱を利用して、暖房や融雪、温室での植物の栽培等にも役立てることができます。
しかしこの温度変化の少ない地中に植物の種があると、発芽することができません。
なぜかというと、種はその実の中に、発芽し、さらに地上に芽を出してから光合成を始めるまでの栄養を蓄えているのですが、
地中の深い場所に種があると、発芽しても地上に辿りつくことができないため、植物は発芽しないのです。
(反対に一日の気温の変化を感じられる場所に出ることができれば、植物が発芽する可能性が高まると言えます。)
もともと植物の種は、いっせいに芽を出す訳ではなく、いろんな状況下で生き残れるように、
何%かは埋土種子として土の中で休眠し、生き残れる条件がより高まるように目覚めのタイミングを待っています。
たまにニュースで古代の種が遺跡の中から見つかり、何千年ぶりにその植物の発芽に成功した、
というニュースを見かけますが、土の中というのは植物にとって安全なタイムカプセルのようなものなのかもしれません。
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土の中にはさまざまな植物の種子が眠っています。
例えば動物が餌を求めて土を掘り返したり、木が倒れて根が出たり、はたまた地滑りなどで地中が地上に露出すると、
今まで地中にあった種子たちが目を覚まし、新たな命を森の中にもたらします。
一見すると何もない土の中には、実は外に比べるといつでも涼しく、暖かく、そして様々な命の種が眠っているのです。