鵺とトラツグミ

森+LABO 2017.04. 4

こんにちは、森+LABOです。


今回は冬の東山で見られる野鳥「トラツグミ」を紹介します。

toratsugumi.png
トラツグミは体長約30cmくらい。東京の都心でも見られるヒヨドリに似た大きさの鳥です。


トラツグミは山地の森林や雑木林、農耕地、公園などに生息し、茂った林の中を低空飛行しています。

寒いところに生息しているものは、冬の間だけ、より暖かい場所に移動する「渡り鳥」ですが、
東山のまわりで見られるトラツグミは夏に山地で繁殖し,冬季平地で越冬する「漂鳥(ひょうちょう)」です。

昔は里山で普通に繁殖していたので留鳥(一年中同じ場所に留まって生息している鳥のこと)でしたが、

最近は都県境の山地でしか繁殖記録がないので漂鳥になります。


体の地色が黄褐色で、黒い斑点模様があることから、「虎鶫(トラツグミ)」という名前がつけられました。
飛ぶ時には広げた羽の裏側に黒と白の帯が見えます。

地味なような、派手なような模様ですが、落葉の上を歩いていると背景に同化して見えずらくなります。
基本的には雑食で、地上を歩いては落葉の下にいるミミズや虫などを捕まえて食べたり、
冬の間は木の実を食べたりしています。

でも一番特徴的なのは、トラツグミの「さえずり」です。
それは一体どんなものなのでしょうか?

*

鳥には「さえずり」と「地鳴き」という二つの鳴き方があります。
日本野鳥の会のHPにある解説を引用すると...、

さえずり
主にオスが繁殖期に出す美しい声のことで、種によって大きく異なる。さえずりの意味として、ひとつにはメスへの求愛、また、自分の存在を他のオスに知らせる「なわばり宣言」が挙げられる。
さえずりによっては、「聞きなし」といって人間の言葉に置き換えられるものもある。

地鳴き(じなき)
さえずり以外の声のこと。雌雄、成鳥幼鳥、季節にかかわらず聞かれる。
例えばウグイスの地鳴きは「チャッチャッ」という声、さえずりはご存知「ホー、ホケキョ」。
個体どうしの情報交換の意味がある(らしい)。

トラツグミの地鳴きは「グワッ」とか「シーッ」ですが、
さえずりは「ヒューッ」とか「ヒー」と口笛を吹いたような、金属音に近いを出します。
トラツグミの繁殖期である5月~6月頃になると、暗い森にこの不気味な音が響くわけです。

トラツグミはフクロウなどと同じ夜間にさえずる種類の鳥なので、
夜の森にこの寂しげな鳴き声が響くことから、地域によっては「幽霊鳥」や「地獄鳥」と呼ばれています。

さらにもっと昔、古事記や万葉集の中にもトラツグミは登場します。
伝説の生き物「鵺」の声が、このトラツグミのさえずりだとされていたのです。

鵺は頭がサル、胴体はタヌキ、手足はトラ、尻尾はヘビという空想上の生き物。
そんな生き物の声でさえずる鳥が東山の里山の中にいると思うと、ちょっとどきどきしますよね。

もし夜の森の中から笛を吹くような鳥のさえずりが聞こえてきたら、
繁殖期を迎えたトラツグミが鳴いている証。

もし、深い森の中でそんなような声を聞いたら、トラツグミの姿を思い浮かべてみてくださいね。

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